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うぇぶもん日記

東京・横浜を中心に活動するWebコンサルタントうぇぶもんのよもやま話です。

西野亮廣氏は競争戦略のごく当たり前のことをしているに過ぎない

西野氏のイラスト無料化に関する議論がネット上では今日も盛んに行われているが、私としては本件は騒ぐようなことではない、と若干冷めた目で眺めている。

なぜ騒ぐようなことではないかというと、西野氏のやっていることは、古くからある競争戦略の、ごく当たり前のことをやっているに過ぎないからである。

競争戦略は、アメリカの経営学マイケル・ポーターが1980年発表した代表作『競争の戦略』に詳しいが、経営戦略の古典と言われている普遍的な考え方である。イラスト販売というビジネスならではの特殊性はあるが、基本的な構図で当てはまる部分も多い。

競争戦略では代表的な3つの戦略があるとされている。それがコストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略である。今回西野氏が取った戦略はコストリーダーシップ戦略の亜種と言える。

コストリーダーシップ戦略は規模の経済が働きやすい。つまり、規模が大きな企業が優位に立つ、ということである。基本的には薄利多売の競争になるので、多くの製品を作る体力があり、広い販売網を持ち、高い知名度を持った企業の方が有利になるからである。西野氏もイラストレーターとしては十分過ぎる知名度を持ち、多くの人に情報を送り届けるプラットフォームを持ち、自身で1万冊を購入する経済的優位性があるわけだから、やはり規模の経済という彼の優位性を活かしたコストリーダーシップ戦略といえる。

同じ市場で誰かがコストリーダーシップ戦略をとった場合、迎え撃つ競合の選択肢もまた、基本的には3つしかない。さらに安い価格で販売するコストリーダーシップ戦略で対抗するか、高いコストと引き換えの高い価値を提供する差別化戦略で独自の道を行くか、別のセグメントに経営資源を集中する集中戦略で直接対決を避けるしかない。

どの戦略を取るかは、本人の自由である。違法でなければどの戦略をとってもいい。イラストレーターであってもこれは同じである。ビジネスマンとしての西野氏のやり方を認めながら、狡猾だ、卑怯だ、一貫性がない、炎上商法だ、などといった様々な視点でも彼は今日も攻撃されているが、彼はただ古典的な戦略を今の時代環境に合わせて真面目に実行しているに過ぎない。

彼が無料でイラストを提供することで、イラストレーターの仕事を奪う、という意見がある。これは甘えた考え方である。コストリーダーシップを選択する競合がいて、自分はその戦略を取りたくない、もしくは取れないのなら、差別化戦略か、集中戦略を取るだけである。世の中の企業やアーティストはそうやって継続的に活動する経済力を手に入れてきた。政治経済に影響力があり政府が保護する必要がある一部の商材を除いては。

無料なんかで提供されたら自分の仕事はなくなる、などというのは、お金に代わる価値を自分は提供できない、それを考えるクリエイティビティを自分は持ち合わせていない、自分のイラストはその程度のモノなんです、と言っているに等しい。そんな想像力・創作力の欠如したイラストレーターは、西野氏が登場しようがしまいが、やがて仕事を失うことだろう。そもそも、西野氏と競い合う土俵にすら立っていないのではないかと思う。

こうやって考えていくと、この議論は非常に馬鹿馬鹿しい、と思えるのである。しかしこうやってブログにしてしまうということは、やはり人の心を熱くさせるテーマなのであろう。